カーリー〜黄金の尖塔の国とあひると小公女

カーリー
著:高殿円/イラスト:椋本夏夜
発行:ファミ通文庫エンターブレイン
ISBN:4757726619
評価:★★★☆


ヴィクトリア王朝時代の面影薫る英国領・インド。14歳だったわたしは、祖国イギリスを離れ、”国王の王冠にはめられた最大の宝石”と謳われた東洋の地で、一人の少女と出会う。オニキスの瞳に神秘的な雰囲気をあわせもつ彼女の名前はカーリー。彼女は、遠い異国の地で出会った、わたしの運命そのものだった−!激動の時代に、イギリスとインドのはざまで揺れる運命の恋を描いた、高殿円のヴィクトリアン・ラブ・ストーリー、遂に開幕!

銃姫」とかも積みっ放しなんで、初めて読む高殿作品になります。あらすじを読んでラブ・ロマンスモノだと改めて認識。そっか、ビクトリア朝の女子寄宿舎モノではなかったんだ。
中盤までは甘々な空気漂う寄宿舎生活が描かていて。縦ロール、転入生いじめ、女王様きどりのリーダー、口やかましい先生など、ビクトリア(というより小公女セーラ序盤の雰囲気)がたっぷりでにやにやと。定番ながらもやっぱりこういうのは好きですわ。けど表紙に見られるような百合っぽさは全然ありませんでしたが。
後半は政治闘争劇になってしまうのでちょっと想像してたのとは違ったなぁ。世界史に詳しくない人はついてこれる?まぁ、ヴィクトリアン目当ての人は大丈夫か?けどインド独立運動なんてライトノベルではまず出てこないから、今後どう展開するか見もの。
歴史上のイベントから1938〜39年頃の想定。またインドが舞台なのでヴィクトリア朝の雰囲気は結構薄め。「エマ」みたいなのを期待してると肩透かしを食らいそう。
ラストでポーランド侵攻が始まり、ずいぶん駆け足な流れっぽいけど、1巻はもう少し前の時間から始めて、寄宿舎生活をじっくり書いてほしかったな。
後書きを読んで気がついたけど、インドでカーリーと言われると、普通に破壊と嫉妬の女神の方が思い出されて、カレーは思いつかないな。「敵は海賊」とかの影響が未だにあるみたい。あと、カーリーは愛称なのに、シャーロットは何で愛称じゃないんだろう。チャーリーは雰囲気が違うにしても、ロッテとかいいと思うんですが。ああ駄目だ、中途半端な言語感覚が物語へのシンパシィを低下させてる。

なんだかんだいったところで恋愛モノ好きとしても、歴史モノ好きとしても次巻で物語をどう膨らましてくれるのか期待といったところです。

余談ですが、フランスの戦車ルノーR35は全然旧式じゃないですよ。名前のとおり1935年に正式採用された戦車です。ドイツやソ連に比べれば確かに設計思想は古いんですがイギリスとはどっこいぐらい。