花守

花守
著:越後屋鉄舟/イラスト:文倉十
発行:GA文庫(ソフトバンククリエイティブ)
ISBN:4797337125
評価:★★★★


「守るよ。僕が、これから先ずっと、子規を守る」
少年が幼い頃に出会った少女は、鬼を自らに降ろして怪異を滅ぼす役目「花主」の継承者たることを宿命づけられていた。人には巨大すぎる力をその身に受け入れることで、短い命があらかじめ決定している少女・花橘子規。幼馴染みである彼女を守り続けるため、蔵内春獄は花主を守護する役目「花守」になることを迷わず選んだ。
町の人々を守るために人知れず続く少年と少女の戦いの日々は、しかし避けようのない終わりへと、否応なしに近づいてゆく。
新進気鋭の作者が贈る、切なくて温かい、真摯なラブストーリー。

GA文庫での初めての新人さんの作品。作品全体の雰囲気は凄く好み。後書きにある「読後感のよいもの」というのも概ね達成できてるんじゃないかな。
怪異とのバトルはほとんど無くて、メインはラブストーリー。難病モノの変形のラブストーリーといいたいところだけど、子規の寿命の話が出てくるのは結構ラストになってから。なので中盤までは悲壮感は無く、クラスメイトとの軽い掛け合いと淡い恋心が中心。脇役たちも絞り込んであるし、それぞれの思惑もはっきりしており、皆魅力的なキャラに仕上がっているなと。姉さんはちょっと不思議過ぎますけど。
引っかかったのは、怪異とのバトルシーン。分かりにくいし、他の部分に比べて明らかにテンポも悪く、見せ場もないと思います。設定の都合上必要なのはわかりますが、今後改善して欲しいところ。
あと小萩の使い方はちょっともったいない気が。あの程度であれば姉さんのキャラと合わせても問題ないし、せっかく魅力的なキャラになっているんだからもっと生かせた気がします。
なんにせよ、新人さんとしては合格点以上の出来だと思います。今後の活躍が楽しみです。
本作といい「伊佐と雪」といい、GA文庫には雰囲気重視の編集者がいるのかな。他の文庫にはあまり見られない要素なので大歓迎ですが。