ノルマルク戦記6

ノルマルク戦記 6
著:赤城毅/イラスト:小河原亮
発行:スーパーダッシュ文庫集英社
ISBN:4086303140
評価:★★★★

ユリウスとデミアンの決闘、ユーディトの告白。
5巻のユリウスとデミアンの戦闘シーンをピークに盛り下がっているかなぁ。けどその代わりにユリウスに対するベルモンの仕打ちはなかなか。首都奪還の辺りの策とかはよく書けてると思うけど、あの状況でのユリウス側の視点での描写が欲しかったところ。
ユリウスは担ぐ神輿としては十分だけど、重要な場面で茫然自失したり、感情に流されて暴走したり、指揮官や統治者としては全く才が無いとしか思えませんが。ベルモンは人間的には嫌な奴だけど要所要所をきちんと締めてるので、どちらが名君になりえるかといえばベルモンだろうな。
戦国時代のキャラならデミアン=織田信長、ユリウス=豊臣秀吉、ベルモン=徳川家康って感じかな。デミアンは旧来の階級の破壊、中央集権的な改革をやっているし、ベルモンは逆に旧来の権力基盤に則って権力を束ねる政治を行っているところがそんな感じ。ユリウスは、譜代の少なさ、家柄を無視した人材の取り立てとソレに対する旧来の階級からの反発って辺りが秀吉に近い感じがする。
結局軍師の策は無かったと言っていいんじゃないかな。たった一人の指揮官に対する心理戦をやったって戦況を覆せるわけ無いのに。ユリウスの性格を見切っての策なのか?けどそのためにはユリウス本人の目の前にぶつけないと全く意味がないし、せいぜい効果が得られそうだったのはあの決闘の場面ぐらいでしょう。