円環少女(1)バベル再臨

円環少女(サークリットガール) 1
著者:長谷敏司/イラスト:深遊
発行:角川スニーカー文庫角川書店
ISBN:4044267030
評価:★★★★☆


幾千もの魔法世界から<地獄>と呼ばれ最も忌み嫌われた場所−地球。なぜなら、本来自然なはずの魔法現象を消滅させてしまう恐るべき力を、人類だけが持っているからだった。元の世界で犯した罪のため<地獄>に堕とされた一人の少女魔導師・鴉木メイゼル。彼女の受けた刑罰は、<地獄>で敵対魔導師100人を倒すこと−。<円環大系>の使い手が、誰も成し得たことのない過酷な運命に立ち向かう!灼熱のウィザーズバトル開幕!!

いや、久しぶりに面白いと思える新作。今までの作品(「楽園 戦略拠点32098*1」、「天になき星々の群れ フリーダの世界*2」)はいずれもツボにはまったんですが、今作も違わず大変楽しめました。ただシリーズものってことで、続きはちゃんと出るのかが心配ですが。魔法は地球の一般人には観測できず、「存在するものは観測できる」の原理の裏返しで、一般人に対してほとんど魔法攻撃が効かないという珍しい設定になってます。あらすじではメイゼルが主役みたいですが、本編は武原仁メインで、想像したよりメイゼルの出番は少なめなのが残念。スタイルはこんなでしたかね、読むのはずいぶん久しぶりなので。結構特徴的なスタイル。読点で短く切り、映像で言えば、全体をカバーする視点で見るのではなく、パッパッパッとカットが次々に切り替えられる感じでかなり勢い重視。ただ、その間隔がかなり短く早く感じるので、読みづらいと思うかも。
ラブコメ半分、バトル半分な感じで、「灼眼のシャナ」に近いかな。どちらにもいえることですが、やはり熱いバトルにはかっこいい悪役がいてこそですね(シャナのドミノ戦はやはり腑抜けていて、空回り気味だと思う)。神意を得ようとするエオノールを代表とする聖騎士たち、最後まで我を曲げない<染血公主>ジェルベーヌ・ロッソなど武原仁の熱い気持ちに答えるだけの気概を持ったライバルキャラがよく描かれているなと。
設定解説は最小限しかないので(ストーリーの勢いを殺がず良いと思う)、そもそものキャラの行動原理がわかりずらかったり。最終的には私怨なので、対立理由は理解できるんですが。後書きにある某宗教って聖騎士=基督教とかって話?違うかな?バベルはメソポタミア神話系でしたっけ。そうするとギルガメッシュの話?
用語についていくつか。

  • 「円環大系」って体系じゃないんですね。まぁこの名の下にいくつもの体系があり、その中にいくつもの魔法があるってことでしょうか。
  • 魔法の使い手は「魔導師」なんですね。自分の記憶では魔法使いはmagicianとかmageとかmagusとかmagiusとか。wizardは賢者(wizeから)だし、同系統のwitchは女性系ですが悪意が含まれてる。魔導師だとsourcererかな。魔法使いがどちらかというと奇跡を起こすのに対して、ソーサラーだと科学的というか体系的に整理された術を使うって感じなのかな(alchemistより前時代的)。ただ導師だと「人を導くもの」という意味が強いんですが。魔道士とかの方が一般的ですね。こちらだと魔道の使い手ぐらいの意味なんで。
  • 神音に対しては真空で対抗できなかったのでしょうか。水なんかより確実に音を遮断できるかと。

まぁなんだかんだと書きましたが2巻が楽しみなシリーズだと。願わくば時を空けずに出てくれればと。

*1:ISBN:4044267014

*2:ISBN:4044267022