放射線の防護

いつもの記事とはまったく毛色が違いますが、ば○こう○ちの納得いかないコーナーさんの「チェルノブイリ原発事故」の記事に一応、学生時代に原子核工学も専攻してますし、第2種放射線取扱主任者の免状取得という昔とった杵柄で、反応してみたいと思います。
放射線への人体への影響を考える場合、線量当量(単位:シーベルト(Sv)、またはレム(rem))で評価するのが適当です。
線量当量は照射線量(単位:レントゲン(R))から求めるのですが、放射線の種類や吸収物質の吸収率など、ものすごくめんどくさいです。
自然界における被曝と原発事故の被曝では放射線の割合などが異なるので、単純に倍数比較できないのですが、比率が同じと考えた場合、以下のようになります。

  • 自然界の被曝

約90mram=0.9mGy
通常の被曝では1Sv=1Gyとしてよいはずなので、約0.9mSvとなります。
ただし、これはあくまで全世界の平均値で、地域によって大きく変わります。

ICRPによる勧告では年間の線量当量限度は作業者で0.5Sv、一般公衆で5mSvです。
作業者とは、原発の作業員や研究者など強い放射線を短時間浴びる場合、一般公衆とはその場で24時間生活する場合と考えてもらえればよいと思います。

上記のことからゲートのあった場所で通常の5倍ですから、4.5mSvとなり、ほぼ一般公衆の限度となり、妥当かと思います。
また、今回のディレクターは短時間の立ち入りということで作業者とみなしてよいので、限度を500mSvとすると、自然界の約550倍までは大丈夫ということになります。ということで一応計算上は健康にあまり害はないということになります。
実際には通常胸に線量当量測定用フィルムバッジを着用し、立ち入り後、フィルムから実際に浴びた線量当量を計ります。最後に大丈夫といっていたのはこの結果に問題がなかったからでしょう。
ただ、チェルノブイリでは確かに外壁の破損箇所から今も放射性物質が漏れていると聞いたことがありますので、肺からの体内被曝を防ぐためにマスクぐらいはしたほうがよかったのではないでしょうか。

ニュースでよく通常の何倍という表現で視聴者の危機感をあおりますが、実際の安全とされている閾値から計算するとそうでもないことがよくあります。センセーショナルなニュースにしたいのか知りませんが、もう少し正確な報道をして欲しいところです。

うろ覚えの知識なので間違っていたらすみません。

<参考:放射線の防護 改訂三版/丸善*1 専門書なのであまりお勧めしません>

*1:ISBN:4621023462