プリンセスの一人軍隊


著者:渡辺裕多郎/イラスト:大林森
出版社:ソノラマ文庫朝日ソノラマ
ISBN:4257770449
評価:★

 俺の名前は南郷誠一――国連機密軍“アンソフ”に所属していた元軍人だ。戦士として一人軍隊の称号を得るほどの戦績を残した俺だが、師団が解散されてからは野に下って年相応の男子高校生という身分を手に入れ、穏やかに暮らしていた。ところが、何の因果か超お嬢様の甲野沙織に莫大な借金を作ってしまい、今では彼女の召使いの身に甘んじている……。そんなある日、沙織に魔の手が――!?

軍隊上がりの主人公が非常識なヒロインに振り回されて戦闘を繰り広げるストーリー。このジャンルでは、「フルメタル・パニック」というメジャー作品があるわけですが、比較するとやや劣ると感じる。ボケと突っ込みが入れ替わってしまった分、戦闘の非常識さが失われコメディとして成立してないとか、PCPネタはもう古いだろうとか、最終的には近代戦どころか忍者の戦いだとか、国連軍なんて言った割には、単なる内ゲバに終始してるだけとか、まあこの辺は読み手の好みの問題だと思うので、次回に期待と言えんるんですが…。
むしろ作者の文体であろう、地の文は突込みどころ満載で、(P296 L11)だけでも、テロリスト*1と犯罪者を誤用してるし、傭兵部隊が信用できないのは西ローマ帝国滅亡にすらみることが見ることが出来るし、なんというかいい加減過ぎ。使ってる言葉の意味ぐらいちゃんと知っててよ、言葉でメシくってるんだから、と言いたい。
さらに鼻につくのは、何かにつけて作中で戦前の日本を否定している。後書き辺りにまとめてあるのなら別に気にしないが、これはフィクションでしょう。なんで作中に入れるかなぁ。少年による殺人で、少年法改正がお笑い種だ、とか書いといて、本編は高校生が人を殺す話だし。
あー、ダメだ。この作品には突っ込むことしか出来ない。作者の主義主張っぽいところが、主人公の心象にのみ書かれている。つまり、ストーリーと完全に乖離してしまって浮いているのが分からないのだろうか。ストーリーや設定で嫌いじゃないぶんだけ、どうしようもないなぁ。

*1:テロル(恐怖、暴力)に訴えて自分の政治目的を実現させようとする者