殿がくる!


著者:福田政雄/イラスト:相楽ヒロカズ
発行:スーパーダッシュ文庫集英社
ISBN:4086302012
評価:★★★★


丹羽新一郎(17)は、その日もカツアゲされていた。そんな彼を救ったのは、かの大将軍。織田信長公だった……!?「やられっぱなしとは、恥じるがよい!!」そう吼えた勢いでヤクザの事務所を壊滅させた彼は、明け方にはなぜか丹羽家の居候におさまっていた――。死ぬほど偉そうなタイムトリッパー・信長が、日本を斬る! 古今未曾有・天下無双の痛快☆殿アクション!第3回SD小説新人賞受賞作、登場!!

まず、装丁が既刊とかなり違う印象。実際に違うのは裏表紙のイラストが大きくなったことぐらいか。表紙にキャラクター以外のものが入っているのはSD文庫では珍しいかも。
第3回スーパーダッシュ小説新人賞佳作作品だそうだが、結構よく描けてると感じる。もしかしたら、文体はライトノベルよりも、戦記・軍記モノに近いかも。読書が感情移入するであろう、丹羽新一郎をサブキャラ化し、破天荒な信長を主人公としたのは大正解だと思う。この作品のおかげで「敦盛」の内容を始めて知った。「人生五十年〜」の下りは有名だが、そういう内容だったのか。惜しむらくは同級生の女子内藤理緒を配しながら、ラブ(コメ)部分がかなり薄いこと(相手の丹羽新一郎のキャラのせい)、時代背景となる北の脅威がいつのまにか金融危機にすり替わっていることなど、せっかく張った伏線が使い切れてない点がいくらか見受けられるが、この調子なら次の作品も期待できそう。
あと、一応エピローグで続きが描けそうな形にしているが、シリーズ化はやめてもらいたい。それぞれのキャラの魅力はこの作品内で十分引き出されていると思いますので。
このレベルの新人さんが出てくるようならSD文庫も相当期待できるのですが。

気になった点
最初の信長の名乗りで「織田上総介信長」と言っているが、信長が上総介の官位だったのは尾張支配→上洛ぐらいまでではなかったか。後半で右大臣と言ってるわけだし(ちななみに上総介は正六位、右大臣は正二位と全然異なる)。当時は互いに官位名、もしくは苗字+官位名で呼び合ったという記述をどこかで見かけたことがあったような。