真実の扉、黎明の女王


著者:いわなぎ一葉/イラスト:AKIRA
発行:富士見ファンタジア文庫富士見書房
ISBN:4829116781
評価:★★★


望まない王座に就いたことも。味方がいなくて孤独なことも。ふとした時に見せる笑顔も。そしてなによりも姿形ではなく、その魂というべき部分が──。「似ている……クリムに」
 どうしようもなく心が揺れるのを感じながら、カルロは呟いた。
 最愛の女王・クリムエラと引き裂かれ、2000年前の古代から、自らの時代に戻されてしまったカルロ。そんな彼がウェルラント王国の“隠された王女”クレアと出会った時、運命は動き出す。後継者争いと、隣国との戦に乱れるウェルラントで、次第に惹かれあうカルロとクレア。
 この邂逅は偶然なのか?
 それとも……。
 刻を超え魂が何度でも巡りあう、ピュアラブストーリー第2弾!

他所でのアンケートへの回答(1つ目のコメントは当方のものです)のように前作「約束の柱、落日の女王」は、2004年で最も面白かったと思います(なにせ4回も読み直しましたから)。とにかくボリュームに対する話のバランス。300頁に対する構成は非常に見事でした(「12月のベロニカ」は構成力では更に上をいきますが何分ストーリーが先読みできすぎでした)。若干のボリュームの物足りなさを感じましたが、クリムとカルロのラブストーリーとして必要十分なものでした。(この辺、最近の電撃の新人には見られないところです。デビュー作からシリーズ化させるケースが多いので、話をまとめる能力が低いんじゃないかと邪推)

で本作となるわけですが、うーんちょっと見劣りしてしまうなぁ。並程度には楽しめますが、前作のような研ぎ澄まされた構成力はまぐれだったのかな。基本的には同じような舞台が設定されているのですが人数が増えたせいか(キャラ自体の魅力は増してるのですが)、それぞれのストーリーが書き切れていないと感じます。特にアリーシア王妃とゴードウィン王とか真実の扉とか。1巻毎のストーリー完結タイプの人はラノベにはあまりいないので、ぜひ続けていただきたい。
後書きによれば3巻があるそうなので次作も期待しています。

解説文の「何度でも」は「何度も(というか幾度の方がいいのでは?)」だろうと思うのですが…。