「物語派」と「キャラ萌え」と「属性萌え」の対立

物語派」と「キャラ萌え」と「属性萌え」の対立 [絵文録ことのは]
硫黄島からの手紙」を観てる最中に、どうしても上記のエントリを思い出さずにはいられなかった。
この映画はほぼ全編栗林中将と一兵卒の西郷の2人の視点で語られる。ただ問題なのは実際の戦闘の様子があまりに描かれないため、スケール感や時間間隔が全く感じれらないのだ。例えば画面中ではせいぜい2〜30人の小隊が夜襲をしかけ、全滅する。その後、戦闘結果が栗林中将に報告される場面があるが、そこでは1000名戦死と言われる。また、作中では漫然と時間が経過しているが、戦闘開始から栗林中将戦死までは30日以上の間があり、その間の弾尽き糧尽きで死に物狂いで応戦するような情景は全く描かれていない。
つまり、この映画は極めてキャラ萌え思想の元に製作されており、二人の主人公に萌えられない観客は押し付けがましいヒューマニズムを2時間以上も見させられることになる。また、太平洋戦争をひとつの物語とし、この映画をその一場面と見ようとする<物語派>も上述の通り、あまり満足できないであろう。また基本的に洞窟暮らしの場面ばかりなのでシチュエーションも乏しく、はっきり言えば出演している俳優に興味がなければスルーした方が幸せだろうという感想しかもてなかった。
こんな映画を見るくらいなら、「海軍特別攻撃隊の遺書」とかをお勧めする。大分古い本になるが(私が持ってるのは90年代に再販されたもの)、海軍特別攻撃隊で出撃した2000余名の出撃直前の遺書が収録されている。その辺の安っぽいヒューマニズムモノよりははるかに感動できること請け合いである。